おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由 (中島聡)

おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由 (アスキー新書)

おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由 (アスキー新書)

マイクロソフト黎明期から活躍していた日本人Geekによる書籍。サービスやプロダクトをバラバラに提供しても意味がなく、それらをトータルに組み合わせて、顧客の効用をどれだけ上昇させるかが重要であると言い続ける一冊。メッセージは、それだけなので個人的には学ぶところは余りなかった。将来的な部分よりも、過去のマイクロソフトでの逸話や、ビルゲイツとジョブスの考え方の対比など、現場で実際にゲイツやジョブスなどの巨人たちと働いてきた人間が語るマイクロソフトやアップルが非常に生々しくて面白かった。おもてなしの経営学よりも、マイクロソフト秘話やマイクロソフトの成長過程・組織構造を書いてほしい。

マイクロソフトのカルチャーは、ビル・ゲイツそのままで、そのいちばんの目標は「勝つ」ことにある。【p.29】

結局のところは「インターネットバブルは一度ははじけてしまったけれど、やはりインターネットは僕らのライフスタイルを根本から変えてしまうほどのパワーを持つ」意味での「インターネットの再評価」だったし、「インターネットの『あちら側』の本当の価値は、ソフトウェアやサーバにあるのではなく、『他の人たち』にある」という「他の人とつながるためのツール」としてのインターネットの重要性の再認識である。【p.85】

実はブルーカラーの労働者に対して、仕事への「誇り」や「愛着」を持たせることで、大量生産時代以前の熟練工が持っていたクラフトマンシップを取り戻せるメリットが意外に大きいのである。【p.111】

だけどなぜか、ウィンドウズだけ本社からクリス・ラーソンという米国人が日本に来ていて、僕はその部下になって仕事をしていたんです。この上司がまたすごくて、常にハイテンションで会議中に叫び声を上げるは、顔を真っ赤にして怒るは、断固として譲らないはで、有り余るほど熱意を持って取り組んでいた。【p.175】

仕事人にはふたつのタイプがいるという話を聞いたことがあるんだ。「上を見て」仕事をするタイプと、「天を見て」仕事をするタイプ。上司の顔色や直近の自分の損得だけで動くのが「上を見て」仕事する人。「天を見て」仕事をする人は、会社や上司のためではなくお客様のためにいい仕事をする、この技術が未来につながるとか社会的に必要だという美学を貫き、自分の信条を持って動く。【p.191】

いつまでもOSやアプリケーションをパッケージ販売するのではなく、サービスの使われ方に対して、たとえばユーザーの満足度に応じて価格を変えたり、ユーザーが得た利益の対価としてその何パーセントかを還元していただくとか、そのようなかたちでソフトウェア契約をサービス事業に変えていくパラダイムシフトを起こさないといけない。【p.194】

ユーザー・エクスペリエンスの設計が難しいのは、ソフトやハードはもちろん、インダストリアルデザインやマーケティングが一体となって初めて魅力になりうるものだからです。つまり、縦割りの組織ではとても設計できない。トップの人がユーザー・エクスペリエンスの大事さを理解して引っ張らないとダメなんです【p.204】

一方で、大企業を飛び出したのはいいけど、僕のように外資系の波に乗って米国に来てということができずに、どうしようもない下請けベンチャーみたいなところに入って日々苦しんでいる人もいる、僕のような人間が日本にいないわけではなく、花開きにくいのだと思います。【p.226