次世代マーケティングプラットフォーム(湯川鶴章)

ネットに関する最新技術動向が2〜6章でよくまとめられている。また1章、7章に著者の意見は集約されており、広告業においてクリエイティブの重要性は相対的にポジションを下げていくだろうという話である。
本書は、Web屋や広告代理店の人よりも、広告主側の経営レベルの方が読むべきだろう。現在のテクノロジーで「何ができるか」を俯瞰できるため、それらの技術をどのように活用すべきか?を考えるにあたって、経営視点からツールを見つめることが有益と思うからである。
広告という枠にとらわれ過ぎると、とてもツマラナイ内容に読めてしまうだろう。マーケティングとはCMを流すことではなく、売上に貢献するあらゆる活動であるという視点から読めば色々と見えてくると思われる。

ここでもやはり、職人芸という個人の技の競い合いから、大量生産というテクノロジーを使って多くの人間の力を引き出す手法を用いた者が成功してきたわけである。それがテクノロジーによる社会変革の基本的な形であるわけだ。【p.39】

米国の広告主は、購買の直前のユーザーの行動だけでなく、それ以前の行動にまで興味を持つようになってきている。広告をクリックしなかったものの購買につながる行動は「ビュースルー」という表現で呼ばれるようになっている【p.106】

でも、最終的な利益を重視するならば、消費者の感性に訴えるような印象深いメッセージを何度も何度も見せることよりも、顧客のニーズを正確に把握し適切な商品を適切な価格で供給する関係を築くことのほうが、これからより重要になるのだ
クリエイティブな広告はなくならない。しかしその重要性は低下せざるを得ないのだ。【p.189】

さてこうしたツールを管理、運営するのは、マーケティング部だろうか。広告を出稿するのは宣伝部だろうか。ホームページ運営に関連するのだから広報部だろうか。
わたしは、どれも正解ではないと思う。コミュニケーション戦略をこうしたマスメディア全盛の20世紀型の組織体系のまま実施することに無理があるのだ。企業コミュニケーションが、広報、広告、マーケティングなどといった部署に分断されていては整合性に欠けるし、十分な力を発揮できないだろう。それにコミュニケーションが企業活動の中核になるのであれば、経営陣の直轄部署になるべきだ。【p.200】